竜破壊を生業として生きてきた彼は、神の祭壇へとやって来た。その目的は当然、その神殿にまつわる竜を倒すためだ。
今回の相手は「神」と呼ばれる高位な竜だという。だが、彼にとって敵対する竜がどのような相手だろうと関係ない。それが本当に神であろうと、である。
いつものように破壊剣を携え、いつものように神殿を戦場に変え、そしていつものように去っていく。
少なくとも彼は今回の戦いもそうなると思っていた。
だが彼は、後に自分が犯した過ちに気が付くのである。彼の存在を根底から覆す、致命的なミスに。
それは、目的の竜と敵対した、まさにその時であった。
え!? ラーの翼神龍ってドラゴン族じゃないの!?
そこではバスター・ブレイダーが種族を勘違いしていた!
MEWです。全国の【バスター・ブレイダー】使いのみなさんも、名前に「竜」とか「ドラゴン」とか入っているからといってドラゴン族だと勝手に決めつけちゃ駄目ですよ。その勘違いのせいでプレイングに支障をきたし、デュエルに敗北することだってあるんですから。(過去2敗)
今回は、前回の【バスター・ブレイダー】紹介記事を書いている最中に毒電波をキャッチし、改めて作った構成となっております。
その名も【神殿バスター・ブレイダー】。
おおまかなデッキギミックや動かし方は前回とほぼ同じですが、最大の違いは王家の神殿を投入したことです。
王家の神殿
「王家の神殿」の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分は罠カード1枚をセットしたターンに発動できる。
②:自分フィールドの表側表示の「聖獣セルケト」1体とこのカードを墓地へ送ってこの効果を発動できる。手札・デッキのモンスター1体またはエクストラデッキの融合モンスター1体を特殊召喚する。
初代トラップデッキ使いにして劇中トップクラスの実力者とも噂され、トップクラスに健気なキャラクター、リシドが使っていた永続魔法です。ちなみにMEWは結構好きなキャラクターだったりします。
とりあえず②の効果は忘れていいです。今回大事なのは①の方なので。
【バスター・ブレイダー】の基本陣形はバスター・ブレイダー+破壊剣-ドラゴンバスターブレード(装備カード状態)の布陣で、これを作るために破戒蛮竜-バスター・ドラゴンが便利。
1月発売の新弾、マキシマム・クライシスで登場する新カードの破壊剣士の揺籃はこの基本展開のスタート地点として最適なカードで、必要パーツ全てを所定の位置に持ってこれる点が超優秀。ただし罠カード故の「遅さ」がネック。
…というのが前回の内容でした。
ここで注目すべきなのが、【バスター・ブレイダー】の基本陣形は「EXデッキを使用不能にすることで多くのデッキを封殺する」というコンセプトだという点です。
EXデッキ封殺が強いのは、かつての環境で暴れまわった【帝】の真帝王領域に苦しめられたデュエリストならば百も承知でしょうが、問題はこの布陣は先出しで作り上げないと駄目という点です。
そのため1ターンの「遅さ」が致命的となる現環境では、破壊剣士の揺籃を発動した時点ではもう手遅れ、なんてことも多いです。真帝王領域は魔法カード故に「封殺までのスピードが早い」という特徴がありましたが、こちらは罠とモンスター効果をフルに使わないといけないため、どうしても遅くなってしまいがちです。
前回の構築ではこの点を、リビングデッドの呼び声を使って相手ターン中にバスター・ブレイダーを蘇生させることで罠カードの「遅い」点をある程度解決させていました。
今回の構築は上記の弱点を、キーカードの罠カードを王家の神殿によってムリヤリ自分のターンに発動させることで解決しようというのがコンセプトとなります。
【基本展開】
例えば破壊剣士の伴竜+王家の神殿から、
- 破壊剣士の伴竜を召喚。効果で破壊剣士の揺籃をサーチ。
- 王家の神殿を発動。
- 破壊剣士の揺籃をセットし、即発動。デッキから破壊剣-ドラゴンバスターブレードと「バスター・ブレイダー」モンスター(どちらでもよい)を墓地に送り、EXデッキから破戒蛮竜-バスター・ドラゴンを特殊召喚。
- 破戒蛮竜-バスター・ドラゴンの効果でバスター・ブレイダーを蘇生。
後は相手ターン中に破戒蛮竜-バスター・ドラゴンのもうひとつの効果で破壊剣-ドラゴンバスターブレードをバスター・ブレイダーに装備させれば基本陣形の完成です。
王家の神殿はフィールドに残るから、単純計算でアド+2(次のターンで破壊剣-ドラゴンバスターブレードを装備させると更に+1)となります。
元々破壊剣士の揺籃が1枚で基本陣形完成のために有用なカードなため、スムーズに動かすだけでこれだけのアドバンテージを獲得することができるのです。特に先行1ターン目は相手の妨害が最も少ないターンですから、ここで動かせるようになるのは大きいです。
この布陣では破壊剣士の伴竜はあえてそのまま立たせておくのがマイトレンド。破壊剣士の揺籃の墓地効果で次の相手ターンに破壊されないため、次の自分のターンまで安定して持ち越すことができます。
基本陣形がちょこっと崩れた程度ならば、破壊剣士の伴竜さえ生きていれば特殊召喚効果でいくらでもリカバリーできます。増殖するGを打たれて展開を止めた時とかも、破壊剣士の揺籃が墓地にあってLPに余裕があれば、破壊剣士の伴竜をそのまま置いておけば次のターンで動き回れます。
また破壊剣士の伴竜+王家の神殿に加え、更に「破壊剣」カードが追加で手札に1枚あれば、続けて以下の動きができます。
- 上記の1~4まで同じ展開。
- 破壊剣士の伴竜+バスター・ブレイダーで2体目の破戒蛮竜-バスター・ドラゴンをS召喚。
- 2体目の破戒蛮竜-バスター・ドラゴンの効果でバスター・ブレイダーを蘇生。
- 手札の「破壊剣」カードを墓地に送り、墓地の破壊剣士の伴竜を自身の効果で蘇生。
- 破壊剣士の伴竜+1体目の破戒蛮竜-バスター・ドラゴンでえん魔竜レッド・デーモン・アビスをS召喚。
といった具合に、隣に追加で妨害効果を持っているえん魔竜レッド・デーモン・アビスを並べることができます。
これなら基本陣形の弱点の1つであった、ブラック・ホールや妨げられた壊獣の眠りのような全体破壊魔法で一発瓦解、というような事態を回避でき、またチューナーの蘇生効果で更なる展開も可能となります。
しかも本来であれば次のターンで退場してしまう破戒蛮竜-バスター・ドラゴンを2体目と入れ替えることで自壊デメリットを実質回避することができ、フィールドに維持することもできます。
手札3枚でこの布陣、しかもEXデッキ封じがついてくるとなれば狙わない理由は無いでしょう。
別の展開方法として、「破壊剣」☆1チューナーモンスター+破壊剣の追憶+「破壊剣」カードの組み合わせでも基本陣形が完成します。破壊剣の追憶が☆7確保カードとしてそこそこ優秀なので、これを王家の神殿で速攻発動させることで基本陣形完成を速めることができるようになります。
当然ですが、
- 破壊剣士の揺籃をはじめとする罠カードを伏せる
- 次の相手ターンを気合と根性で耐え抜く
- 返しの自分のターンで使う
って感じで1ターンを耐えれば、王家の神殿はもちろんいりません。が、現環境ではその1ターンが致命的なのは知っての通りです。
必要枚数が1枚増えるとしても、この1ターンの速度の違いと必要性は頭の片隅にでも入れておくべきでしょう。
【王家の神殿を使った立ち回り】
王家の神殿は先攻時の動きを高速化させるだけではありません。というかそれだけの理由で採用するなんてつまらないですよね。
王家の神殿は罠カードを1枚だけセットターンに発動可能にするカードですが、その罠カードの種別に制限はありません。永続罠でもカウンター罠でも即発動可能になります。
そのため、例えば相手フィールドに破壊効果持ちの十二獣ドランシアが存在する場合、
- 王家の神殿発動
- 次元障壁、神の通告、迷い風のいずれかをセット
たったこれだけで十二獣ドランシアによる破壊妨害を完全シャットアウトできます。破壊剣士の伴竜などから動く、罠カードを使わない展開を開始する場合は、あらかじめこの動きをした後に展開を始めることで、効果を発動した妨害モンスターを無力化、または破壊することで安全に動くことができます。
特に【バスター・ブレイダー】は展開途中でモンスターを破壊される、効果を無効化されることで基本陣形が作れなくなることが多いため、これらによる妨害モンスターの無力化は特に意識しておくべきです。
本構築では最も数が多い「十二獣出張セット」の十二獣ドランシアを最低限無力化し、「召喚獣出張セット」から出てきやすい召喚獣メルカバー、高知でも徐々に数が増えてきた「WW出張セット」から出てくるクリスタルウィング・シンクロ・ドラゴン(効果破壊耐性付き)の現環境の出張妨害モンスター3すくみ(仮称)を仮想敵としています。
神の通告であれば手札から不意に飛んでくるエフェクト・ヴェーラーや幽鬼うさぎにも対応しており、広い範囲でカバーできます。
また迷い風は自身の効果によってフィールドに再セットできます。通常再セットしたターンに発動させることはできませんが、これも王家の神殿によって再セットターンに即打ち可能となります。
再セット条件が「相手がEXデッキからモンスターを特殊召喚する」と本デッキの目指す基本陣形と噛み合っていませんが、破壊剣-ドラゴンバスターブレードを用意できない状況では間接的に相手のEX召喚の牽制になりますし、EXモンスター以外にも適用できる点で優れています。攻撃力半減も効果無効化も永続適用されるため、据置型メタモンスターに特に有効です。そして何より重要なのがミラー戦に強くなれるという点。同じデッキには…負けたくないですもんね。
ゲームシステム的な話をすると、そもそも罠カードは1ターン分「遅い」ことから魔法カードより効果が強く設定されているため、即打ちできるようになるとメッチャ強いわけです。
気を付ける点は王家の神殿で即打ちできるようになる罠カードは1ターンに1枚までなので、どの罠カードに効果を適用させるか、判断が難しいところでしょうか。
そして当たり前ですが、王家の神殿が引けなかった場合も考えてデッキを構築しています。
サーチもできない永続魔法に依存した構築にしすぎると、手札に来なかった場合にヒサンなことになりますからね。
なので採用している罠カードも、展開に必要なもの以外は、できるだけ単体で十分な仕事をしてくれるものにしてあります。
【EXデッキについて】
破壊剣士の揺籃の効果によって破戒蛮竜-バスター・ドラゴンを特殊召喚する機会が大幅に増えたため、これらは3枚積み確定となるでしょう。
そして同時に「破壊剣」カードや「バスター・ブレイダー」モンスターを墓地に送る機会も増えたため、破壊剣の追憶から呼び出す竜破壊の剣士-バスター・ブレイダーも多めに採用すべきです。
この段階のEXデッキの15枚枠のうち6枠を確定枠として、残りのモンスターの採用理由については以下の通りです。
えん魔竜レッド・デーモン・アビス
破壊剣士の揺籃のデメリット回避(特殊召喚モンスターをS素材にする)
全体除去カードの無力化
チューナー蘇生による展開力の増加
閃こう竜スターダスト
破壊剣士の揺籃のデメリット回避(効果で自壊を回避)
基本陣形の重要モンスターを防御
スターダスト・ドラゴン
全体除去カードの無力化
コンセプト上バックが多くなるため、ハーピィの羽根帚などのバック除去カードの回避
PSYフレーム・ロード Ω
破壊剣の追憶で除外した融合素材カードの墓地戻し
迷い風の使い回し
手札誘発モンスターへの牽制
煉獄龍オーガ・ドラグーン
現構築ではチューナーは破壊剣-ドラゴンバスターブレードのみ使用可能
全体破壊除去カードの無力化(状況限定)
スクラップ・ドラゴン
単体除去(大抵役目が終わった王家の神殿を対象に選択することが多い)
No.38 希望魁竜タイタニック・ギャラクシー
破壊剣士の揺籃のデメリット回避(特殊召喚モンスターをX素材にする)
全体除去魔法カードの無力化
破戒蛮竜-バスター・ドラゴンへの戦闘破壊突破を牽制
あとは使い勝手を考慮して何枚かチョイスしたものが上記レシピとなります。
煉獄龍オーガ・ドラグーンはバスター・ブレイダーに装備されていた破壊剣-ドラゴンバスターブレードを装備解除してからS召喚することになりますが、その状況は大抵ゲーム中盤で手札が0枚に調整しやすい状況なので、効果適用はかなり簡単です。特にこのデッキは破壊剣士融合で手札でくすぶっているカードをセット可能な魔法カードに入れ替えることができるため、簡単に手札を処理できます。
Xモンスターに関しては★7のモンスターを1体ぐらい採用しようと思いましたが(初期案ではNo.11 ビッグ・アイが入っていました)、動かしていると☆7を2体並ぶ状況がかなり限定されており、しかもその状況では大抵そのまま攻めた方が有利だったりしたので、思い切って不採用としました。
その代わり破壊剣士の揺籃や破壊剣の追憶(墓地効果)による特殊召喚の機会が大幅に増えたことから☆8がフィールドにゾロリと並ぶことが多くなったため、★8の神竜騎士フェルグラントを採用して防御手段と【十二獣】などへの対処法を増やしています。
あと聡明なバスブレ使いの皆様は気が付いたと思いますが、現構築のEXモンスターのほとんどがドラゴン族となっています。というか構成上☆8のSモンスター枠のほとんどがドラゴン族中心にならざるを得ないのですが。
そのためミラー戦は先にEX封じを完成させた方が勝ちです。
【天敵について】
【バスター・ブレイダー】最大の難敵が【インフェルノイド】と【KOZMO】です。高知でもそれなりに数が多いにも関わらず、両者共にEXデッキを全くと言っていいほど使わない為、苦労して基本陣形を作ってもあまり効果がありません。
また、以下のような点で相性最悪といえます。
【インフェルノイド】
- 墓地除外効果によって、基本陣形構築のための手段である蘇生を妨害してくる。
- 墓地除外効果によって、各種「破壊剣」カードの墓地効果を阻害してくる。
- 破壊剣士の揺籃によって以前よりもデッキ圧縮が加速したため、隣の芝刈りの効力が上がってしまう。
- 基本陣形をインフェルノイド・ネヘモス単騎で一発突破される。
【KOZMO】
- 基本陣形が全く刺さらない。
- 主力モンスターの攻撃力がヘビィすぎてバスター・ブレイダーでも単騎突破は不可能。
- 基本的に戦闘破壊で敵を倒す本デッキにおいて、上級KOZMOのリクルート効果は突破困難。
- アーティファクト採用型の場合、アーティファクト-デスサイズによって逆にこちらのEXデッキ使用が封じられて身動きが取れなくなる。同じくアーティファクト-モラルタで破戒蛮竜-バスター・ドラゴンを破壊されると戦術が破綻する。
どちらもモンスター効果を中心としたデッキなので、相手より先に破戒蛮竜-バスター・ドラゴン+竜破壊の剣士-バスター・ブレイダーの布陣を作れればそれだけで動きをストップさせられます。
が、両デッキ共に昨今の新カード登場や研究によって、現在はかなりの速度を手に入れており、正直【バスター・ブレイダー】ではとても追いつけません。
メインデッキから対策するのは難しいので(というか多分無理)、サイドデッキでこの2つのデッキを徹底的にメタるべきでしょう。
【帰ってきたアイツら】
お気付きだろうか…。デッキレシピの中に「あれ」があることに。
そう、王宮の勅命です。
来年1月より約13年の沈黙を破り、環境に舞い戻ってきた禁止カード。
…………え、13年!? 何かの間違いだろ…?
実質ライフコスト倍、途中任意解除不可の制約を課されて戻ってきました。本デッキでは虚無空間などと同じく先攻封殺のために使います。特にブラック・ホールや妨げられた壊獣の眠りをノーリスクで防げるのは大きいです。
また本デッキはそこまで魔法カードを必要としないため、既にフィールドにこのカードが表側表示で存在していたとしても展開自体には影響がありません。
ただし破壊剣-ドラゴンバスターブレード(装備状態)の効果が消えるのでEX封じができなくなります。なのでできれば破戒蛮竜-バスター・ドラゴン+竜破壊の剣士-バスター・ブレイダーの布陣が完成した後に張りたいです。この布陣ならEXデッキからモンスターを呼ばれても大した被害はありませんし、LPが維持コストで削れても敵は一切攻撃できないのだからLPの心配はほぼありません。フィールドのモンスター効果と魔法効果を封じたまま竜破壊の剣士-バスター・ブレイダーのパワーで敵のLPを維持コスト700×2より大きく削る事に注視すればそのまま勝てるでしょう。
また途中解除したければスクラップ・ドラゴンで処理できます。☆8のS召喚はしやすいので途中解除はやりやすい部類です。逆に維持したい場合は各種「スターダスト」Sモンスターで補助してやるのもいいでしょう。
また同じく禁止カードから帰還した未来融合-フューチャー・フュージョンもこのデッキと相性がいいです。竜破壊の剣士-バスター・ブレイダーを選択することで「バスター・ブレイダー」モンスターとドラゴン族の破壊剣-ドラゴンバスターブレードを墓地に送れるため、破壊剣士の揺籃ほどではないにしろ基本陣形の主要パーツを揃えることができます。しかも妨害が無ければ切り札の召喚も約束されます。
ただしエラッタによって墓地肥やしが1ターン遅れるようになったため、単純な墓地肥やし目的で使うとこのタイムラグがネックになります。本デッキは王家の神殿を使って速攻でコンボを成立させることを目的としているため、このタイムラグとデッキコンセプトが合致しないと判断して採用していません。
来年の新環境では、今よりもっと竜破壊できそうなデッキに変貌しそうです。今から楽しみにしておくこととしましょう。